# デプロイ更新の「狭間」が本番データを壊す — 新旧の版が同時に動く前提で冪等性を設計する

## 誰向けか

サーバレス関数や Google Apps Script の Web App のように、**「コードを push する」と
「公開されている版を切り替える」が別操作**になっている実行環境で、
その API を自動化から叩いている人。

一般に語られるのは「push しただけでは反映されない」という話までだが、
本当に痛いのは**切替の最中に新旧の版が混ざり、その混在が移行ロジック経由でデータを壊す**ことである。
この文書はその型と、設計・切り分け・検証の3点をまとめる。

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## 症状（実際に起きた並び）

ある Web App に、シート状のデータストアを読み書きする API を実装した。
レイアウトは `1行目=サマリ / 2行目=ヘッダー / 3行目以降=データ` とし、
コードには**旧レイアウトからの移行処理**が入っていた:

```
if (1行目 が ヘッダーと一致) {
  1行目の前に1行挿入する   // ヘッダーを2行目へ落とす
}
if (2行目 が ヘッダーでない) {
  2行目にヘッダーを書く
}
```

この移行処理は「1行目にヘッダーがある旧レイアウト」を想定していて、単体では正しく見える。

1. 公開中のデプロイが**旧い版に固定**されていることに気付き、既存デプロイを上書きして最新版へ更新した
2. **その直後**、同じ一連の呼び出しの中で
   - action A（新機能）→ 成功
   - action B（新機能）→ 成功
   - action C（新機能）→ **`unknown_kind` 相当のエラー**（＝旧版の応答）
3. 数分後、同じ payload で action C を再実行 → **成功**
4. データを読み戻すと **ヘッダー行が2行目と3行目に二重化**しており、
   3行目（データ1行目のはず）が潰れていた

## 何が起きていたか

**デプロイの切替は即時でも原子的でもない。** 切替直後の一定時間、
リクエストごとに新旧どちらの版に当たるかが揺れる。そのため:

1. **旧版**に当たった書き込みが、**旧レイアウト（1行目=ヘッダー）**でデータを書き戻した
2. その直後、**新版**に当たった別の書き込みが「1行目がヘッダーだ」と検知し、
   移行処理の**無条件の行挿入**を実行した
3. 挿入先の2行目には**すでに正しいヘッダーがあった**ため、
   それが3行目へ押し出され、**ヘッダー行が2本になった**

「action C だけ落ちる」も「ヘッダーが二重」も、**どちらも同じ原因（版の混在）**だった。
コードのバグに見えるが、コードは単独では正しい。壊れたのは**版が2つ同時に動いた**からである。

さらに悪いのは、この移行処理が**定期トリガーからも同じ経路を通る**設計だったこと。
放置すれば同じ条件が揃うたびに再発する。

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## 対策1: 冪等性の定義を広げる

多くの人が書く冪等性のテストは「**同じ関数を2回呼んでも同じ結果**」である。これでは足りない。
必要なのは「**新旧の版が同時に動いても収束する**」ことだ。

移行ロジックの鉄則:

> **移行先が既に正しい状態かを確認してから動かす。**
> 「旧形式を見つけたら無条件に変換する」は、新旧が混ざった瞬間にデータを壊す。

先の例なら、判定を次のように分ける:

| 1行目 | 2行目 | 正しい振る舞い |
|---|---|---|
| 空 | ヘッダー | **何もしない**（既に正しい） |
| ヘッダー | データ | 行を挿入して移行する（本来の旧レイアウト） |
| ヘッダー | ヘッダー | **挿入せず、1行目を消すだけ**（混在で生じた状態） |
| 空 | ヘッダー | 3行目にもヘッダーがあれば**その重複行を削除する** |
| サマリ文字列 | ヘッダー | **何もしない**（正常運用中） |
| 空 | 空 | ヘッダーを2行目に書く（初期化） |

実装のコツは、**判定を純粋関数に切り出す**こと。
「現在の1行目・2行目・3行目の内容」を入力に取り、「挿入する/消す/何もしない」という
**計画（plan）だけを返す**関数にすれば、実際のストレージに接続せずに全状態をテストできる。
上の表がそのままテストケースになる。

## 対策2: 壊れた本番データを直す関数を用意する

冪等化しても**すでに壊れているデータは直らない**。修復関数を必ず併せて作る:

- ヘッダーと**完全一致する行**を、正しい位置以外から削除する
- **データ行は絶対に削除しない**（消してよいのは「ヘッダーと完全一致」だけ）
- 戻り値に**修復後の実際のレイアウトと削除件数**を返す（後述の read-back verify に使う）
- 自動化から叩けるところに登録する（人が管理画面を開かなくても直せるように）

## 対策3: 切替直後は本番データを触らない

運用手順として次を守る:

1. デプロイを更新したら**数分置く**
2. まず**読み取り専用の action**（疎通確認・一覧取得）を叩いて、新版が返ることを確認する
3. その後で書き込み系を試す
4. **切替直後に一部の action だけ失敗しても、すぐコードのバグと断定しない。**
   同じ payload を数分後に再実行して切り分ける

この手順を踏むだけで、今回の「存在しないバグを追いかける」時間はゼロになる。
実際、`unknown_kind` は**バグではなかった**（数分後に同じ payload で成功した）。

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## 併せて踏みやすい2つの罠

### 罠1: 公開されているのは「デプロイされた版」であってコードの最新ではない

`push` 相当の操作でコードを送っても、公開エンドポイントの挙動は**デプロイ時に固定された版のまま**。
症状が独特で、**古い action は動き、新しく足した action だけが失敗する**。
コードを読むと確かに新 action があるので「コードはあるのに動かない」と原因を取り違えやすい。

- **確認**: デプロイ一覧を出すと版番号が見える。`@1` のまま新機能を足していたらこれが原因
- **直し方**: **既存のデプロイを上書き**する。新規デプロイを作ると URL が変わり、
  設定ファイルや配布済みの参照を全部貼り替えることになる。
  「URL を変えない」を最優先にする（一度配ったものを貼り替えさせない）

### 罠2: `curl` でリダイレクトを追う POST は、書き方次第で本文が落ちる

この種の Web App は `POST /exec` → 302 → 別ホストへ、という流れになるためリダイレクト追従が必須。
ところが:

| 書き方 | 結果 |
|---|---|
| `curl -L -X POST -d …` | **411 Length Required**（`-X` がリダイレクト先にも POST を強制し本文が付かない） |
| `curl -L --post301 --post302 --post303 …` | **HTML ページが返る**（同じ理由） |
| `curl -L -H 'Content-Type: application/json' --data-binary @file …` | **成功** |

**`-X POST` を書かない**のが正解。`-d` / `--data-binary` を渡せば curl は自動で POST にし、
302 では正しく GET に切り替える。

GET は通るのに POST だけ落ちる、という**部分的な失敗が切り分けの手がかり**になる。
「認証が悪い」「トークンが違う」と疑って時間を溶かしやすいので、まずここを確認する。

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## 検証の型（これが本題かもしれない）

今回の一連は、すべて**「成功したという報告を信じたこと」**が遠回りの原因だった。

- 自動化ツールは `exit 0` を返しながら**1行も変更していない**ことがある
- API は `{"ok":true}` を返しながら**壊れたレイアウトに書き込んでいる**ことがある

だから完了判定は必ず**実データの読み戻し**で行う:

1. 書き込み API を叩く
2. **別経路**（一覧取得 API、あるいはストレージを直接読む手段）で**実際の中身を読む**
3. 期待した位置に期待した値があるかを見る（行番号・列名まで）
4. 全 action を1つずつ叩く。**疎通確認 action だけ通って満足しない**
   （今回まさに「疎通確認は通るのに新 action は旧版」だった）

排他制御のような仕組みも、**同じ操作を2回叩いて2回目が正しく失敗するか**まで確認する。
1回成功したことは、排他が効いている証拠にはならない。

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## チェックリスト

- [ ] 公開エンドポイントの**版番号**を確認したか（コードの最新と一致しているか）
- [ ] デプロイ更新は**既存デプロイの上書き**か（URL を変えていないか）
- [ ] 移行ロジックは**移行先が既に正しいかを確認**してから動くか
- [ ] 冪等性のテストに**「新旧の版が混ざった状態」**が含まれているか
- [ ] 判定を**純粋関数**に切り出して全状態をテストできるか
- [ ] **壊れた既存データを直す修復関数**があり、自動化から叩けるか
- [ ] 修復関数は**データ行を消さない**ことをテストで保証しているか
- [ ] デプロイ直後は**読み取りで新版を確認 → 数分置く → 書き込み**の順を守っているか
- [ ] 完了判定を**実データの読み戻し**で行っているか（`ok` / `exit 0` を信じていないか）
- [ ] **全 action** を1つずつ叩いたか（疎通確認だけで済ませていないか）

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<!-- 出典: マキモノ (デプロイ更新の「狭間」が本番データを壊す — 新旧の版が同時に動く前提で冪等性を設計する v1.0.0) https://makimono-md.vercel.app/md/md-5dbf6686 -->
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