# 「送らなかった行はゼロ」で在庫が消える事故を防ぐ — 全件置換APIに部分入力を通す前の設計

在庫・棚卸・名簿・シフトなど「全件を書き直す」APIに、現場が**一部だけ**入力したデータを渡すと、**入力しなかった行が静かにゼロ（または空）で上書きされる**。実際に起きた事故と、その復旧・恒久対策・回帰テストまでを型にしたもの。

対象読者は、業務システムのバックエンドに「実数を確定する」系のエンドポイントを持たせている人。フレームワーク・言語は問わない（例は表計算をデータストアにした構成だが、RDB でも同型）。

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## 1. 事故の形（まずこれを自分のコードで探す）

事故は次の3つが揃うと起きる。

1. **サーバ側**: 確定APIが「有効な拠点 × 全カテゴリ」を必ず書き、リクエストに含まれなかった組み合わせを `0` で埋める
2. **画面側**: 入力フォームが全拠点分の行を一度に表示し、まとめて送信する
3. **現場**: 担当者は自分の拠点だけを数え、他拠点の行は**触らずに既定値のまま**送信する

担当者にとって他拠点の行は「触っていない空欄」でしかないが、サーバから見ると `0` と区別できない。結果、数えていない拠点の在庫が全部消える。

**この事故は単体テストに出ない。** テストは「送った行が正しく保存されるか」を見るので、「送らなかった行がどうなるか」を誰も書いていない。

### 自分のコードで探すときの目印

```
// 危険: 入力に無いキーを 0 で埋めている
activeSites.forEach(site => {
  categories.forEach(cat => {
    const qty = input[key(site, cat)] || 0;   // ← ここ
    rows.push([id, date, site, cat, qty]);
  });
});
```

`|| 0` / `?? 0` / `get(key, 0)` / `COALESCE(x, 0)` のように、**「キーが無い」と「値がゼロ」を同じに扱っている箇所**が該当する。

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## 2. 設計の原則

**書き込みAPIを作るときは「送られてこなかったものをどう扱うか」を必ず決めて、コードに書き残す。** 省略＝ゼロは、暗黙のまま放置すると必ず事故になる。選択肢は3つ。

| 方針 | 挙動 | 向く場面 |
|---|---|---|
| A. 据え置き | 送られなかったキーは**現在の値をそのまま**書く | 部分入力が前提の業務（拠点ごとの棚卸） |
| B. 明示必須 | 全キーが揃っていなければ **400 で拒否** | 全件を一度に確定する運用（月次締め） |
| C. 部分更新に分ける | 全件置換APIと部分更新APIを**別エンドポイント**にする | 両方の運用が併存する場合 |

現場が一部だけ数える運用なら **A** が正解。以下は A の実装。

### A の実装で外してはいけない点

```
// 送られてきたキーを記録する
const submitted = {};
input.rows.forEach(r => { submitted[key(r.site, r.category)] = true; });

// ★ 現在値の算出は「書き込む前」に行う
//    書いた後に読むと、書いたばかりの自分自身を基準点にしてしまう
const current = estimateCurrentState(data, input.date);

// 送られなかったキーは現在値を据え置く
activeSites.forEach(site => {
  categories.forEach(cat => {
    if (submitted[key(site, cat)]) return;
    rows.push({ site, category: cat, qty: clampToValid(current[site][cat]) });
  });
});
```

**落とし穴が2つある。**

1. **現在値の算出タイミング**。確定処理の中で「今の在庫」を求める関数を呼ぶ場合、**書き込みより前**に呼ぶこと。後で呼ぶと、いま書いた行を基準点にして値が固定され、据え置きが機能しない。
2. **推定値がバリデーションを通らないことがある**。在庫推定は「実績が入力過多で負になる」ことを意図的に許す設計になっていることが多い。一方で書き込み側は「0以上の整数」を要求する。据え置き値は書き込み側の制約に合わせて丸める（`max(0, round(x))`）。丸めが起きたことを警告として返すかは運用次第。

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## 3. 事故後の復旧手順（データを消してしまってから読む人向け）

**元の行を消したり直接書き換えたりする前に、次の順でやる。**

### 3-1. まず「保存されたのか」を本番データで確認する

現場からの報告は「反映されていない」という形で来ることが多い。これを**保存の失敗**と読むと、正常なデータを触って壊す。**先に本番の実データを read-back して、保存の有無を確定させる。**

このとき、報告の文面（「反映されない」）と実際の障害（「他拠点が消えた」）が**別物**であることがよくある。読んだデータを全部見て、報告されていない異常も探すこと。

### 3-2. 履歴が追記型なら「正しい値でもう1本入れる」

棚卸のように「最新の1件を基準点にする」設計なら、**行を消さずに正しい実数でもう1件登録するだけで復旧できる**。同じ日付でも、レコードIDに時刻を含めていれば新しい方が最新として採用される。

- 数えた拠点 → 実測値をそのまま
- 数えていない拠点 → 事故前の最新値をそのまま

この方法は**元の行を触らない**ので、間違えてもやり直せる。行の物理削除は最後の手段。

### 3-3. 派生パラメータの汚染を確認する

確定処理が**副作用として学習パラメータを更新している**ことがある（棚卸から消費比率を逆算する等）。在庫を戻しても、比率は事故時の値のまま残る。設定保存APIで明示的に戻すこと。**戻したあと、パラメータの「出典」表示が実態と合っているかも確認する**（「実測由来」と表示されたまま手動値が入っていると、次に読む人が誤解する）。

### 3-4. 誤登録行を消すなら、消す機能を先に作る

管理コンソールから手で行を消させるのは事故の元。**IDを指定して削除するコマンドを1つ実装し、それを通して消す。** 最低限のガードを入れる。

```
if (!targetId) throw new Error("IDを指定してください");
const remain = rows.filter(r => r.id !== targetId);
if (remain.length === rows.length) throw new Error("見つかりません: " + targetId);
if (remain.length === 0) throw new Error("全件削除はできません");
```

削除後は必ず read-back して、**削除によって他の値が変わっていないこと**を確認する。

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## 4. 画面側の恒久対策

サーバを直しても、**入力する人が拠点を取り違える**リスクは残る。

1. **一度に確定するのは1拠点だけにする**。フォームの先頭で拠点を1つ選ばせ、その拠点の行だけを表示・送信する。他拠点の行を DOM に置かない（置くと、送信時のセレクタが拾ってしまう事故が起きる）
2. **選択中の拠点を、色と文字の両方で示す**。拠点ごとに色を割り当て、①プルダウン本体 ②その下の帯 ③表の各行の拠点名 ④表全体の縁 を同じ色で揃える
3. **色は「そのデータが扱っている色」と被らせない**。商品の色や状態色（赤=危険/緑=正常）を画面が既に使っているなら、拠点にはそれ以外の色相を使う。同系色を当てると区別の役に立たず、かえって取り違えが増える
4. **色だけに意味を持たせない**。「いま入力しているのは ○○拠点 です。他の拠点の在庫は変更されません。」のように、選択中の対象を必ずテキストで出す（色覚特性への配慮でもあり、思い込みの防止でもある）
5. **拠点の色は設定項目にしない**。拠点リストの並び順からパレットを機械的に割り当てる。設定項目を増やすと、そこ自体が新しい間違いの種になる
6. **確認ダイアログに対象名と影響範囲を書く**。「『○○拠点』の在庫をこの内容で確定します。他の拠点の在庫は変更しません。」

### 保存後に画面を更新し忘れない

**同じ画面内に「保存後に再読込するボタン」と「しないボタン」が混在すると、しない方が「保存できていない」と報告される。** 実際は保存されているのに、画面が保存前のスナップショットを表示し続けるだけ。書き込み系のハンドラを追加したら、再読込をセットで入れる。レンダリングだけを見るテストではこの抜けは検出できないので、レビューで「保存後に画面はどう変わるか」を必ず問うこと。

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## 5. 回帰テスト（ここまでやって初めて再発が止まる）

### サーバ側（単体テスト）

**「送らなかったキーがどうなるか」を書く。** これが無いと同じ事故が戻ってくる。

```
// 2拠点を有効にし、拠点Bにだけ在庫がある状態を作る
// 拠点Aだけを数えて確定する
const sent = captureWritePayload(() =>
  submitCount({ date: "...", rows: [{ site: "A", category: "X", qty: 50 }] })
);

const b = sent.rows.find(r => r.site === "B" && r.category === "X");
assert.ok(b, "数えていない拠点の行も書かれること");
assert.equal(b.qty, 500, "数えていない拠点は据え置き、0にしない");   // ← 事故の再現
assert.equal(sent.rows.find(r => r.site === "A").qty, 50);
assert.equal(result.breakdown.length, 1, "内訳は数えた拠点だけ");
```

### 画面側（DOM を実際に描いて判定）

ヘッドレスDOMでフォームを描画し、次を判定する。

- 表の行数が**選択中の1拠点分だけ**であること
- 全行の `data-site` が選択中の拠点と一致すること（他拠点の行が紛れていない）
- 拠点を切り替えると、行がその拠点のものだけに入れ替わること
- プルダウン・帯・表の縁に**同じ拠点色クラス**が付き、切り替えで**まとめて入れ替わり、切替前のクラスが残らない**こと
- 帯のテキストに選択中の拠点名が含まれること

「切替前のクラスが残らない」を明示的に見ること。クラスを add するだけで remove を忘れる実装が通ってしまう。

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## 6. チェックリスト

- [ ] 書き込みAPIで「入力に無いキー」と「値がゼロ」を同じに扱っていないか（`|| 0` を全部見る）
- [ ] 省略時の方針（据え置き / 拒否 / 別API）をコードのコメントに書いたか
- [ ] 現在値の算出は書き込みの**前**に行っているか
- [ ] 据え置き値は書き込み側のバリデーションを通る形に丸めているか
- [ ] 一度に確定する対象を1つに絞り、他の対象を DOM に置かない作りか
- [ ] 選択中の対象を色**と**テキストの両方で示しているか。その色は既存の意味色と被っていないか
- [ ] 書き込み後に画面を再読込しているか
- [ ] 「送らなかったキー」のテストと、DOM の切り替えテストがあるか
- [ ] 誤登録を消す手順が、手作業ではなくコマンドとして存在するか

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<!-- 出典: マキモノ (「送らなかった行はゼロ」で在庫が消える事故を防ぐ v1.0.0) https://makimono-md.vercel.app/md/md-4afd0cf7 -->
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