# スプレッドシートの行を「内容」で特定する仕組みが、ある日から書き戻せなくなる

## これは何の指示書か

既存スプレッドシートを正本にした業務アプリでよくある設計——
**行番号ではなく「内容の組み合わせ（タイムスタンプ＋依頼者＋日付＋品名の先頭N字）」で行を特定する**——が、
ある種の入力値でだけ**永久に一致しなくなる**という不具合の見つけ方と直し方。

症状は「登録はできるのにスプレッドシートに反映されない」。ユーザーからは
「反映されません」としか報告されないので、原因に辿り着くまでが長い。

対象読者: 内容アンカー（row anchor）方式で SS へ書き戻すアプリを保守している人。

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## 手順 0: ユーザー報告から本番ログへ

「〜が反映されない」「〜が失敗する」だけの報告は、**本番のサーバログを見るまで推測しない**。

```bash
# Vercel の場合
vercel logs https://<本番ホスト> --json \
  | grep -iE "\"level\":\"error\"" | head -5
```

見るべきは**エラーコード**。この不具合なら例えば:

```
[<サービス名>] SS write-back failed  code: 'ROW_MISMATCH', statusCode: 409
「依頼の内容が変更されました。再読込してください。」
```

`409` と「変更されました」という文言に騙されないこと。**実際には誰も変更していない**。
全行を走査して1行も一致しなかった、というだけの意味であることが多い。

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## 手順 1: 保存されているアンカーと、実シートの行を突き合わせる

推測で直さない。**DB に保存されたアンカーと、実シートの該当行を並べて見る。**

```js
// DB から（例）
{
  "timestamp": "2026/08/10 22:40:39",
  "requester": "<依頼者名>",
  "deadline":  "2026/08/16",
  "itemHead":  "液晶モニターまとめ売り 18.5インチ "   // ← 20字・末尾が空白
}
// シートの生の品名
"液晶モニターまとめ売り　18.5インチ　５だい"           // ← 全角空白
```

**`itemHead` の末尾が空白かどうかを必ず見る。** ここが今回の犯人。

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## 手順 2: 真因 —— normalize の trim と slice の順序

典型的な実装はこうなっている:

```js
function normalize(s) {
  return s.replace(/　/g, ' ').trim();   // 全角空白→半角、前後をtrim
}

function buildRowAnchor(input) {
  const itemHead = normalize(input.itemName).slice(0, 20);   // ← normalize してから切る
  ...
  const hash = sha256([ts, requester, deadline, itemHead].join('|'));
  return { timestamp, requester, deadline, itemHead, hash };
}

function matchesAnchor(anchor, candidate) {
  return anchor.itemHead === normalize(candidate.itemHead).slice(0, 20);
}
```

一見正しい。しかし **20字目がちょうど空白になる文字列**で壊れる。

1. 同期時: `normalize(品名).slice(0,20)` → `"…18.5インチ "`（**末尾が空白の20字**）が DB に保存される
2. 書き戻し時: 保存値から anchor を復元するのに、同じ `buildRowAnchor` に
   `itemName: 保存された itemHead` を渡す → **`normalize` の `trim` が末尾の空白を落として19字になる**
3. 一方シート側の candidate は `normalize(生の品名).slice(0,20)` で**20字のまま**
4. 19字 ≠ 20字 → **永久に一致しない**

日本語の入力は全角空白で区切られることが多いので、これは珍しいケースではない。
「特定の依頼だけ書き戻せない」という形で現れ、再現条件が分からず放置されやすい。

### 一般化した教訓

> **「正規化してから切る」処理は、その出力をもう一度同じ関数に通すと結果が変わることがある。
> 保存した値を復元して再計算する設計では、変換が冪等（idempotent）でなければならない。**

`trim` を含む正規化と `slice` を組み合わせたら、**必ず往復テストを書く**:
`f(f(x)) === f(x)` を確かめる。

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## 手順 3: 直し方 —— 比較キーだけを冪等にする

`slice` の**後で**もう一度 `trim` する。これで20字（空白付き）でも19字でも同じキーになる。

```js
function itemHeadKey(value) {
  return normalize(value).slice(0, 20).trim();   // slice → trim の順にする
}

function matchesAnchor(anchor, candidate) {
  return itemHeadKey(anchor.itemHead) === itemHeadKey(candidate.itemHead);
}
```

### ⚠ ハッシュを一緒に変えてはいけない

`buildRowAnchor` が返す `hash` を、同期処理が**重複判定キー（unique 制約）**として
DB に保存している場合が多い。`itemHead` の作り方を変えて hash がずれると、

> 次回の同期で既存レコードを「新規」と誤認 → **重複行が大量に生まれる**

**直すのは「照合の寛容化」だけにする。保存値のフォーマットと hash 計算には触らない。**
既存データはそのまま救われる（20字・空白付きの保存値も、`trim` 後は新しいキーと一致するため）。

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## 手順 4: テスト（この3本を必ず入れる）

```js
// 1. 実障害の入力で往復して一致すること
const saved = buildRowAnchor({ ...meta, itemName: '<20字目が空白になる実データ>' });
const restored = buildRowAnchor({ ...meta, itemName: saved.itemHead });  // 復元経路を再現
expect(matchesAnchor(restored, { ...meta, itemHead: '<シートの生の品名>' })).toBe(true);
// 修正前はここが false だった、とコメントで残す

// 2. hash と itemHead の保存形式が変わっていないこと（固定値で pin する）
expect(saved.itemHead).toBe('<現在の値>');
expect(saved.hash).toBe('<現在の値>');
// 将来 hash 計算を変えたらこのテストが落ちる＝重複行事故の予防線

// 3. 冪等性そのもの
expect(itemHeadKey(itemHeadKey(x))).toBe(itemHeadKey(x));
```

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## 手順 5: 検証は「本番の実データ」で締める

単体テストが緑でも、**本番のシートで実際に1行だけ特定できるか**を確認するまで直ったと言わない。
読み取り専用のスクリプトで十分:

```js
// 本番の認証情報で実シートを全行読み、修正後の matchesAnchor で走査する
const hits = [];
rows.forEach((r, i) => {
  if (matchesAnchor(anchor, {
    timestamp: r[col('C')], requester: r[col('D')],
    deadline: r[col('O')], itemHead: r[col('G')],
  })) hits.push(i + dataStartRow);
});
console.log(hits.length === 1 ? 'OK（1行だけ特定できた）' : 'NG: ' + hits.length + '件');
```

**0件なら直っていない。2件以上なら別の危険（誤った行を上書きする）。1件であることを確認する。**

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## つまずきポイントまとめ

| 症状 | 疑うところ |
|---|---|
| 「登録できるのに反映されない」 | 書き戻しの例外が握り潰されていないか。まず本番ログのエラーコード |
| `409 / ROW_MISMATCH` なのに誰も編集していない | 全行走査で0件ヒット。アンカーの照合ロジック |
| 特定の依頼だけ失敗する | アンカー構成要素に**空白・全角空白・日付書式**が混ざっていないか |
| 直したら重複行が増えた | hash を変えてしまった。**保存値と hash は不変に保つ** |
| 単体テストは緑なのに直らない | 実データで往復していない。本番シートに対する読み取り検証を足す |

## 応用: 同型の罠

- 日付を `2026/08/16` と `2026-08-16` で持ち替えている（正規化が片側にしか無い）
- 大文字小文字・全角英数の正規化が build 側にしか無い
- 「読み取りは列名で解決、書き込みは列レターで固定」で**別の列を見ている**
  （同名の列が2つあるシートで特に危険）

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<!-- 出典: マキモノ (内容で行を特定する書き戻しが、ある日から永久に一致しなくなる v1.0.0) https://makimono-md.vercel.app/md/md-0cbe4d33 -->
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