# fail-open のガードが「必要な場面でこそ効かない」のを設計段階で潰す

## 誰のための指示書か

「条件を満たしたら処理を止める」ガード・抑止・重複防止・レート制限を実装する人向け。
とくに **fail-open**（判定材料が取れない時は通す）で作る場合。

この型のバグは **ユニットテストが緑のまま機能だけ死ぬ**ので、テストを増やしても永久に見つからない。
実装前にこの指示書を読ませると、同じ機構を3回作り直す事故を防げる。

## 何が起きるのか

fail-open は「壊れても業務が止まらない」ための正しい設計だが、
**unknown（判定できない）の範囲を広く取りすぎると、ガードが常時 open になる**。
そして open は例外もログも出さないので、誰も気付かない。

典型的な失敗の連鎖（実際に3回作り直した例）:

1. **信号が粗すぎる**
   「前回の起動より後に新しいレコードが増えたか」で判定した。ところが参照先のディレクトリは
   **複数の実行主体が共有**しており、無関係な主体がレコードを1件作るだけで抑止が解除された。
   → テストは緑。実データでのみ空振りする。

2. **不在を unknown に落とす**
   信号を「自分が投入した識別子から始まったレコードがあるか」に絞った。ところが
   **ディレクトリ自体が存在しない**ケースで `readdir` が `ENOENT` を投げ、それを
   「判定できない」として fail-open していた。
   ディレクトリ不在は「一度も実行されていない」＝**未消化の積極的な証拠**であり、unknown ではない。
   しかも新規の対象では必ずここを通るので、**抑止すべき場面でこそ効かない**。
   → テストは緑。

3. ようやく `ENOENT` だけを「不在＝証拠」として扱い、それ以外（`EACCES` 等）を fail-open に残して直った。

## 実装手順

### 手順1: unknown の棚卸しを先に書く（コードより前）

判定材料が取れないケースを**全部列挙**し、1つずつ「unknown か、それとも証拠か」を決めて表にする。
コメントとしてコードに残すこと。決めずに書き始めると必ず全部 unknown になる。

| ケース | unknown か証拠か | 理由 |
|---|---|---|
| ディレクトリが無い | **証拠**（未実行） | 一度も動いていないから作られていない |
| ファイル0件 | **証拠**（未実行） | 同上 |
| 空文字・空配列 | **証拠**（未実行） | 同上 |
| 権限エラー | unknown | 存在するかどうかも分からない |
| タイムアウト・I/O エラー | unknown | 同上 |
| 形式が壊れている | 要判断（多くは unknown） | 途中で壊れた可能性 |

経験則: **「無い」は unknown ではないことが多い**。unknown は「見に行けなかった」時だけ。

### 手順2: 判定を純関数に切り出し、3値で受ける

boolean 2値にすると unknown を表現できず、必ずどちらかに潰れる。

```js
// consumed: true = 消化済み / false = 未消化(証拠あり) / null = 判定不能
export function shouldSuppress({ state, now, consumed, windowMs }) {
  if (state.route !== EXPECTED_ROUTE) return false;
  const last = Date.parse(state.lastAt);
  if (Number.isNaN(last)) return false;
  if (now - last >= windowMs) return false;   // 古すぎる記録は当てにしない
  return consumed === false;                   // null は抑止しない(fail-open)
}
```

`consumed === false` と明示的に書く。`!consumed` にすると null も拾って**過剰抑止**になる。

### 手順3: エラーの粒度を分けて捕まえる

外側の1つの `try` で全部包むと、**不在も権限エラーも同じ null に潰れる**。これが失敗2の原因。

```js
let names;
try {
  names = readdir(dir);
} catch (error) {
  // 不在は「一度も実行されていない」証拠。unknown ではないので fail-open にしない。
  if (error?.code !== 'ENOENT') throw error;   // 他は外側へ渡して fail-open
  names = [];
}
```

### 手順4: 読む量に上限をかける

候補が増え続ける場所（ログ・トランスクリプト・履歴）を見るなら、
**件数上限**と**1件あたりの読み取りバイト数上限**を必ず入れる。全部読む実装は本番データで詰まる。

```js
const candidates = names.filter(isTarget).map(withTimestamp)
  .filter((r) => r.ts > last).sort((a, b) => b.ts - a.ts).slice(0, 10);
for (const c of candidates) {
  const head = readHead(c.file, 65536);   // 先頭だけ。実データに数MBの1ファイルが混ざる
  if (matches(head)) { consumed = true; break; }
}
```

### 手順5: どちらの誤りが困るかを先に決める

- **過剰抑止**（false positive）… 通すべきものを止める
- **空振り**（false negative）… 止めるべきものを通す

**不可逆・人が待つ側の誤りを避ける**方に倒す。判断をコメントに残す。
例: 「開くべきものを永久に開かない方が困るので、迷う所は fail-open のままにした」。

## 検証手順（ここを省くと必ず見逃す）

1. **ユニットテストを書く**。ただし**これだけでは絶対に見つからない**。fixture は自分が想定した世界しか再現しない。
2. **実データ・実 state に対して1回通しで踏む**（dry-run があれば dry-run で）。
3. **「発火しなかった」を見たら、正しい判定なのか fail-open に落ちたのかを必ず切り分ける**。
   検出ブロックだけを再現する小さなプローブスクリプトを書き、途中の値を全部出力させるのが速い。

```js
// probe: 検出ブロックを実データで再現して、どこで unknown に落ちるかを出す
console.log('dir       =', dir);
console.log('dir exists=', fs.existsSync(dir));   // ここが false だった
console.log('candidates=', candidates.length);
console.log('=> consumed =', consumed);
```

4. **発火する側と発火しない側の両方**を実測する。片側だけでは「常時 open」を検出できない。
5. **新しいテストを足したら、条件を外して落ちることまで確認する**（異常注入）。
   落ちないテストは何も守っていない。分岐を1つ消して1件赤くなるのを見てから戻す。

## 完了条件（これを満たすまで「直った」と言わない）

- テストが緑（必要条件でしかない）
- **実データに対する通し実行で、抑止が発火するケースと発火しないケースの両方を観測した**
- 異常注入で新テストが落ちることを確認した
- unknown の棚卸し表がコードのコメントに残っている

## 適用しない場面

- 判定材料が常に手元にある（自プロセスのメモリ内だけで完結する）ガード。unknown が存在しないので不要。
- fail-**closed** で作るべき安全機構（決済・権限・破壊的操作）。そこは「判定できない＝止める」が正しい。
  この指示書は fail-open を選んだ場合の話。

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<!-- 出典: マキモノ (fail-open のガードが「必要な場面でこそ効かない」のを設計段階で潰す v1.0.0) https://makimono-md.vercel.app/md/fail-open -->
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