# スプレッドシートの「行削除」を DB へ安全に同期する（行UUID方式）

Google スプレッドシートを人間の入力源、DB をアプリの正本として運用していると、
**「シートから行が消えた ＝ そのレコードを無効化したい」** という同期要求が必ず出てくる。
しかし素朴に実装すると **実在するレコードを大量に誤削除する**。この指示書はその安全な作り方と、
実際に踏んだ失敗パターンを含む。

## 前提

- 入力源: Google スプレッドシート（人間が行を追加・削除・並べ替えする）
- 正本: RDB（例: Postgres）。夜間バッチでシート → DB へ全件取り込み
- 目的: シートから行が消えたら、対応する DB レコードを `archived_at` 等で無効化する
- 削除は物理削除しない。必ず論理削除（`archived_at` / `archived_by` / `archived_reason`）にする

## 絶対にやってはいけない: 内容マッチによる削除判定

「会社名 + 件名でシートを引いて、無ければ削除」は**必ず失敗する**。理由:

- シートが全レコードを含む保証がない（フィルタ済み・年度別タブ・進行中のみ、等）
- 表記ゆれ（全角半角・空白・法人格の有無）で一致しない
- 1レコードが複数行に分割される（分割請求・前金/残金・明細行）

実測では、内容マッチで進行中レコードの相当数が偽陽性になった。**行の同一性は内容で決めてはいけない。**

## 正しい方式: 行に UUID を打つ

1. シートの右端に非表示列 `row_uid` を追加（**列番号はハードコードせず必ずヘッダー名で解決する**。人間が列を挿入する）
2. 取り込みバッチが、`row_uid` が空の行に UUID を採番して書き戻す
3. DB 側に対応表テーブルを持つ

```sql
create table row_links (
  row_uid text primary key,
  record_id uuid not null references records(id) on delete cascade,
  last_seen_at timestamptz not null default now(),
  missing_since timestamptz,          -- 欠落を初めて観測した時刻
  created_at timestamptz not null default now()
);
create index on row_links (record_id);
```

4. 毎回の取り込みで、シートに存在した `row_uid` の集合 `alive` を作る
5. `row_links` にあって `alive` に無いものが「消えた候補」

## 二段確認（1回の欠落では消さない）

```
1回目に欠落を観測 → missing_since = now() を立てるだけ。archive しない
2回目も欠落      → はじめて archive 対象
途中で復活       → missing_since = null に戻す（二段確認をやり直す）
```

一時的な読み取り失敗・シート編集中のスナップショット・行の並べ替え途中を吸収するために必須。

さらに **「1レコードに紐づく row_uid が全部消えた時だけ archive する」**。
1レコードが複数行に分割されている場合、1行でも生存していればそのレコードは生きている。

## 多重ガード（これが本体。1つでも欠けると事故る）

`archive` を実行する前に、次を全部チェックして 1つでも該当したら **archive も missing_since 更新も行わず中止し、通知する**。

| ガード | 条件 | 防ぐ事故 |
|---|---|---|
| 列未解決 | `row_uid` 列がヘッダーで見つからない | 列削除・タブ間違いで全件消失判定 |
| 行数下限 | シートの行数 < 想定の下限（例 500） | 読み取り失敗・空レスポンスで全件 archive |
| 生存数下限 | `alive` の件数 < 下限（例 300） | 同上 |
| 対応表の取得失敗 | 対応表の取得で例外 | 空集合を「全部消えた」と誤認 |
| 初回ベースライン | 対応表が 0 件 | 採番前の初回実行で全件 archive |
| **UUID重複** | シート内に同じ `row_uid` が 2 行以上（後述） | 書き戻しによる UUID 複製・上書き |
| 大量消失 | 欠落数 > `max(10, 総数 × 2%)` | 大規模な列ズレ・タブ差し替え |
| 適用上限 | archive 候補 > 20 件 | 想定外の一括削除 |

**重要**: すべて「止めて通知する」fail-safe にする。「怪しいので一部だけ実行」は絶対に作らない。

## 踏んだ最大の失敗: 書き戻しが UUID を複製し、隣の UUID を上書きする

シート側に自動処理（Apps Script 等）があり、**シート全体を `setValues` で書き戻す**設計だと、
分割行の展開処理（`data[i].concat(...)` で 1 レコードを複数行に展開する類）が
**同じ `row_uid` を複数行にコピーする**。しかもコピー先の行が元々持っていた別の UUID を**上書きして消す**。

実測（データ行 1370 の例）:

- 22 個の UUID が連続行ブロックに複製され、**余剰 67 行**
- 対応表 1368 件のうち **67 件の UUID がシートから完全消失**
- しかし **そのうち 56 件は同じ内容の行がシートに現存**（＝削除されていない）
- 大量消失ガードが `max(20, 総数×5%) = 68.4` だったため、**欠落 67 は 1.4 差ですり抜けた**

設計時の想定「複製されても元の行の UUID は残るから、1 行でも生存すれば alive」は成立しなかった。
**複製は上書きを伴う。**

### 対策

```ts
// 取り込みの行ループで出現回数を数える（Set では重複が潰れて検出できない）
const occurrences = new Map<string, number>();
let duplicateUidCount = 0;   // 重複した UUID の種類数
let duplicateRowCount = 0;   // 余剰行数

for (const row of rows) {
  const uid = clean(row[uidColIndex]);
  if (!uid) continue;
  const n = (occurrences.get(uid) ?? 0) + 1;
  occurrences.set(uid, n);
  if (n === 2) duplicateUidCount++;   // 2 回目でその UUID を「重複」と数える
  if (n > 1) duplicateRowCount++;     // 2 回目以降を余剰行として数える
  alive.add(uid);
}

// リコンサイル冒頭で中止
if (duplicateUidCount > 0) {
  await notify(`🚨 同期を中止: uid が重複(重複uid=${duplicateUidCount}件/余剰行=${duplicateRowCount}行)。`
             + `書き戻しで uid が複製・上書きされた疑い。archive も missing_since 更新も行っていません。`);
  return;
}
```

そのうえで **大量消失の上限を `max(10, 総数 × 2%)` まで下げる**。5% は実データでは緩すぎる。

**根治**は「シート側の自動処理が `row_uid` 列を複製しないようにする」こと。
ガードは事故を止めるだけで、同期機能自体は重複が解消されるまで動かない。

## 逆方向（DB → シート）の除外フラグ

アプリ側で無効化したレコードをシートにも反映したい場合、`row_uid` の隣に `除外` 列を持ち、
取り込み時にその行をスキップする。ここにも罠がある。

**「無効化された全レコード」を対象にしてはいけない。** 自動メンテ処理（重複統合・自社分の除外・
金額同期など）が付けた無効化まで対象になり、大量の行が恒久スキップされて取り込みが壊れる。
実測では自動メンテ由来が 561 件あり、安全上限がなければ取り込みが止まっていた。

**対象は「人間がアプリ上で明示的に無効化したもの」だけ**に絞る（`archived_by` に実在ユーザーの
識別子が入っているもの、など）。

## 通知

中止・実行のどちらも通知する。**通知先は 2 系統以上**（担当チャンネル + 責任者への個別 DM）にする。
通知関数は**絶対に throw しない**こと。通知障害で同期本体を止めない。

よくある落とし穴: 通知先の環境変数が未設定でも `continue-on-error` のステップだと
CI は緑のまま、通知は完全な no-op になる。**「設定した」ではなく「実物が届いた」で確認する。**

## 検証手順（本番データに書き込まずに確認する）

取り込みスクリプトに `--dry-run` と `--reconcile-only` を必ず用意する。

- `--dry-run`: DB もシートも一切書かない。読み取り専用の認証スコープを使う
- `--reconcile-only`: 取り込み本体をスキップし、削除判定だけ回す

```
$ <runner> scripts/import.ts --reconcile-only --dry-run
総行数: 1371
[uid] 新規採番=0 alive=1298 excluded=3
[reconcile] DRY-RUN missing=67 初回欠損=67 archive候補=0
```

さらに **独立した監査スクリプト**でシートを直接読み、
「データ行数 / 空 UUID / ユニーク UUID / 重複グループ数 / 余剰行数」を出して
リコンサイルの出力と数字が一致するか突き合わせる。実装のログだけを信じない。

注意: 中止時に通知を送る実装だと、**dry-run でも通知が実送信される**。検証で連打しないこと。

## 導入順序

1. `row_uid` / `除外` 列を追加（冪等に。既存列を壊さない）
2. 採番だけ回す（archive は無効）。対応表のベースラインを作る
3. `--dry-run --reconcile-only` で欠落の中身を**目視**する。この時点で偽陽性が出れば設計が間違っている
4. 独立した監査スクリプトで UUID の重複・欠番を確認する
5. ガードを全部入れてから、はじめて archive を有効化する
6. 初回の本番実行は `missing_since` が立つだけ。実 archive は最短で 2 回目の実行

## チェックリスト

- [ ] 列はヘッダー名で解決している（列番号のハードコードなし）
- [ ] 行番号をキャッシュしていない（並べ替えで動くので毎回引き直す）
- [ ] 二段確認（1回目は missing_since のみ）
- [ ] 1レコードの全 UUID が消えた時だけ archive
- [ ] UUID 重複の検出（Set ではなく出現回数）
- [ ] 大量消失・適用上限・行数下限・初回ベースラインの各ガード
- [ ] すべてのガードが「止めて通知」
- [ ] `--dry-run` が完全に読み取り専用
- [ ] 通知が 2 系統に実着弾することを実物で確認
- [ ] 論理削除のみ（物理削除しない）

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<!-- 出典: マキモノ (スプレッドシートの行削除をDBへ安全に同期する（行UUID方式） v1.0.0) https://makimono-md.vercel.app/md/db-uuid -->
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